「いのちの営み、ありのままに認めて」出版のお知らせ

  昨年の9月に「新しいファミリーコンステレーション東京ワークショップ2015」へご参加くださった皆様には既にお知らせしておりましたが、谷口(西澤)起代さんによって日本語で初めて出版されたバート・ヘリンガー氏の著書「ファミリー・コンステレーション創始者バート・ヘリンガーの脱サイコセラピー論」(原題『Acknowledging What is1999年初版)の完全復刻版「いのちの営み、ありのままに認めて」が出版されることになりましたので、ここにお知らせいたします。6月1日にはAmazon.co.jpの他、全国チェーンの大手の書店に一斉配本されるそうです。店頭にない場合も、取り寄せが可能です。

 

 ↓下記リンクをクリックすると、Amazon.co.jpのページが開きます。

 

 いのちの営み、ありのままに認めて: ファミリー・コンステレーション創始者 バート・ヘリンガーの脱サイコセラピー論 完全復刻版

 

バート・ヘリンガー (), 谷口 起代 (翻訳)

定価:  2700 (税込)

単行本: 256ページ

出版社: 東京創作出版; 完全復刻版 (2016/6/1)

言語:  日本語

ISBN-10: 4903927245

ISBN-13: 978-4903927244

発売日: 2016/6/1

 

 この本は、初めて日本語で出版されたファミリーコンステレーションの書籍として非常に評判が高く、バート・ヘリンガー氏がファミリーコンステレーションを通してどのように生命と向き合っているのか、その彼の姿勢と哲学、人柄に触れることができるとてもお勧めの良著です。5年前、海外へ渡航してまでバート・ヘリンガー氏に会いに行きたいと私に感じさせ導いた力動も、実はこの本からやってきました。しかし旧版の「ファミリー・コンステレーション創始者バート・ヘリンガーの脱サイコセラピー論」は、絶版後に定価の数倍の値段で中古本が取引される程の人気で、長らく入手が困難になっていたのです。

 

 そして私が昨年東京ワークショップの準備を進める中で訳者の谷口起代さんに協力をお願いした際に、ファミリーコンステレーションを学ぶ上で欠かせないこの良著を日本語で読むことができないのはとても残念なので、是非復刻してもらいたいというリクエストをしていました。その願いを起代さんは、完全復刻版という形で1年がかりで叶えてくださいました。谷口起代さんは、2003年と2004年にバート・ヘリンガー氏のワークショップを旦那さんの谷口隆一郎氏と共に主催され、ファミリーコンステレーションの変貌期を直に肌で感じながら、それまでのサイコセラピー(心理療法)という枠組みを越えた新しい可能性を日本に紹介してくださった方です。旧版のタイトルが「~脱サイコセラピー論」となっていることからも、当時から革新的な捉え方を先取りしていたことが伺えます。

 

 これは最近になってファミリーコンステレーションと出会った方には馴染みのない話だと思いますが、そのワークの進み方とその意義は時代を経て進化し、変貌してきました。当初ファミリーコンステレーションはサイコセラピーとして紹介され、バート・ヘリンガー氏も自身をサイコセラピスト(心理療法家)として認めていた時期がありました。それはこのワークが世界的に広く知られるようになったきっかけとして、心理学者や心理療法家、精神科医などの専門職の方たちによってその価値を見いだされ、その手法が彼らの分野で主に利用され広まっていったという経緯がある故です。また当時の社会における受け皿としてより多くの人々に認識されやすかったものが、一般的にも浸透していたサイコセラピーであったから、ということも言えるでしょう。

 

 しかし、現在ヘリンガー夫妻がHellinger® scienciaの旗印の下に行なっている「新しいファミリーコンステレーション」は、バート・ヘリンガー氏本人も度々ワークショップの中で言及している通り、サイコセラピーとは全く異なるものです。ソフィー夫人によれば、現在Hellinger® scienciaで扱うコンステレーションのうち、サイコセラピーの領域に対応するものは全体の5%程度に過ぎず、残りの95%は人生における他の状況のためのものだということです。つまり現在は、例えば教育や政治、司法、紛争解決など他のさまざまな分野でもこのワークが利用されるようになってきており、その影響もサイコセラピーが主に対象としている個人だけではなく、社会的な枠組みにまで及ぶようになってきています。

 

  このファミリーコンステレーションの変貌の経緯については、Hellinger® scienciaのWebサイト上の「New paths」というページで説明されており、その日本語訳は当Webサイト上の「新しい道」でご覧いただけます。

 

 この経緯の中でもっとも重要な転換点となるのは、ファミリーコンステレーションが あなた という関係性を越えた 私たち のものになったということです。それは、サイコセラピーとして行なわれていた従来のファミリーコンステレーションの中でも見られる セラピストとクライエント援助者と助けを求める者知る者と知らぬ者 という二元性をも過去のものとしました。つまり、個人的な苦痛や困難な状況を解決したいと願う者を助ける枠組みとしてそれまで当て嵌められてきた医者と患者のような関係———いわゆる メディカル(医療)モデル” ———が、特に私たちの人生における困難や危機に対処するための枠組みとしては適当でないということを率直に認めた、という点にあるのです。

 

 では、従来のサイコセラピーとして行なわれてきたファミリーコンステレーションは、どうなってしまうのでしょう? 今まで多くの人々を助けてきたやり方が、まったく意味のないものになってしまったのでしょうか?

 

 これらの問いは、ファミリーコンステレーションの転換期を身近に体験した方たちにとっては、切実なものだったようです。従来のファミリーコンステレーションをサイコセラピーとして提供してきた先人たちの多くは、これらの問いを抱えながらバート・ヘリンガーの元を去っていきました。彼らの多くは、心理学者、精神科医などのサイコセラピーを主に提供する職業に就いていたからです。彼らの職業領域においては、メディカル(医療)モデル医者と患者 という関係性の垣根を取り払うことなど当然ながら許されていなかったので、これは尤もな反応なのだと思います。医学や心理学などの学問、つまり を自らの職業としての立脚点とする彼らのフィールドにおいては、クライエントから問題について何も聞かずに始まってしまう新しいファミリーコンステレーション、そしてそのファシリテーターに求められる「何も 知ることなく コンステレーションに導かれる」という態度は許容されていなかったからです。

 

 しかしこれらの問いに対して、以下の映像の中で厳しいながらもバート・ヘリンガー氏は次のように言っています。

 

"It is over" 「(従来のファミリーコンステレーションは)終わったのです。」

 

 

(日本語訳の字幕は、昨年9月に東京ワークショップに参加された方が追加してくださいました。Special thanks to T.M.

 

 

 これは、どういう意味なのでしょう? 注意しなければならないのは、過去に行なわれてきた数々のコンステレーションが意味のなかったものだったということを言っているのではありません。先程ご紹介した「New paths(新しい道)」にも書かれている通り、それらは当時の社会の中で 私たち の意識が変容するための準備としては、ある期間重要な役割を果たしてきたことは確かです。しかしその時期は、もう終わったのです。なぜなら私たちは 私たち であるということに、少しずつ気づき始めているからです。

 

 このようにワークの位置づけられる枠組みや、その進め方が時代を経て進化したとしても、その背景に流れるバート・ヘリンガー氏の哲学や彼の生命に対する視座は常に一貫しています。この本を読んでいただくことで、その源から続く大きな流れに触れることができます。昨年の9年ぶりのヘリンガー夫妻の来日を機に、本書の復刻に向けてご決断くださった谷口起代さんへの感謝を込めて、ここにご紹介させていただきます。

 

 

アナロジック クリエーション

 

代表  井上 慎介